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コラム

ファンドを活用した事業承継について

2019.06.18コラム

はじめに

近年、プライベートエクイティファンド(以下、「PEファンド」)による未上場企業への投資が活発となり、新聞やニュースなどで目にする場面も非常に多くなってきました。また、新たなPEファンドの立ち上げや既存のPEファンドによる大型のファンドレイズなどを目にするたびに、今まで以上にPEファンドを活用した事業承継が活性化することが予想されます。
一方で、ファンドと聞くとテレビドラマ「ハゲタカ」でイメージされるような経営危機や破綻した企業を安く買い叩き、強引な再建計画を通じて再生を行い、高値で売却するようなことを思い浮かべる人も多いことでしょう。確かにハゲタカファンドと言われるようなファンドもあるのは事実です。しかし、その数は少なく、少しずつではありますが、企業価値を高める事業承継のパートナーとして、PEファンドの認知が広がっています。
今回のコラムでは、そもそもPEファンドとは何なのか、PEファンドを事業承継にて活用するメリット及び具体的な支援策、2019年に入ってからの具体的な事例をご紹介したい思います。

PEファンドとは

PEファンドとは、その名の通り、株式市場に上場していない未上場企業の株の投資・運用を行うファンドであり、①スタートアップ企業への投資をするベンチャーキャピタル、②キャッシュフローが安定した成長・成熟企業への投資をするバイアウトファンド、③経営不振に陥っている企業への投資をする企業再生(ターンアラウンド)ファンド、④経営危機や破綻した企業への投資をするディストレスファンドなどがあります。
上記のように本来PEファンドという言葉の定義では、様々な種類のファンドが挙げられますが、現在の日本においてPEファンドと呼ばれる場合、ほとんどの場合に想定されるのは②のバイアウトファンドになります。
バイアウトファンドは、一般的にキャッシュフローが安定した成長・成熟企業に対し、過半数以上の株式の取得し、社外役員派遣を行い、様々な経営支援をすることを通じてして企業の価値を向上させ、投資後3年から5年程度でIPO、第三者への譲渡又は自社株買いなどの方法で最終的に保有株式の売却を行います。
本コラムでは、PEファンド=バイアウトファンドとしてお考えいただければと思います。

PEファンドを事業承継にて活用するメリット及び具体的な支援策

創業者の利益を確定させ、次の世代に事業及び資本をしっかりと引き継いでいく事業承継においても、PEファンドを活用するメリットは、数多くあります。中長期的な視点での企業成長にコミットするパートナーとして、親族内での事業承継や同業他社などへの事業承継では得られない投資・経営のプロフェッショナルから様々な支援を得ることが可能です。
一例ではありますが、具体的な支援策(メリット)を下記に記載しております。自社のみでは実行できないことや実行できるかもしれないがその見極めが難しい場合など、数多くの事例にて経営豊富なPEファンドから支援を受けることを検討してはいかがでしょうか。

  • オーナー経営から組織経営への移行
  • 次世代経営者を支える経営チームの育成
  • CEO又はCFOなどマネジメント人材の紹介・招聘
  • 経営の可視化
  • オペレーションの最適化
  • IT化の支援
  • 従業員インセンティブの導入
  • コンプライアンスの強化
  • 事業の潜在成長力の見極めと持続的成長戦略の策定・実行のサポート
  • 企業の組織・風土・インフラの強化
  • 同業他社などの買収戦略の実行サポート
  • IPOプロセスへの準備・対応
  • グローバル事業展開のサポート
  • 成長資金の提供
  • 新規事業の開発
  • etc.

PEファンドによる投資事例(2019年1月以降、一部抜粋)

PEファンドによる投資事例(2019年1月以降、一部抜粋)
日付 対象会社 業種 PEファンド
2019年1月 フェニックスインターナショナル ニットウェア企画生産 アント・キャピタル・パートナーズ
2019年1月 オリオンビール 酒類清涼飲料の製造仕入販売 野村キャピタル・パートナーズ、カーライルグループ
2019年1月 乃が美ホールディングス 高級パン製造販売 クレアシオン・キャピタル
2019年1月 アートジャパン 建設機械の路面保護用ゴムパッドの製造販売 日本投資ファンド
2019年1月 長野工業 高所作業車を製造・販売する建設機械メーカー ジャフコ
2019年1月 プロフレックス 油圧ホース・金具製造販売 日本成長投資アライアンス
2019年2月 シーケル 人材派遣・製造請負 ライジング・ジャパン・エクイティ
2019年2月 マテリアルグループ マーケティングPR、人材紹介事業 アドバンテッジパートナーズ
2019年3月 プラスアルファ・コンサルティング クラウド型テキストマイニング 野村キャピタル・パートナーズ
2019年3月 ワールドパーティー 傘専業メーカー CLSAキャピタルパートナーズ
2019年3月 ブルームグループ アミューズメント商品・玩具・生活雑貨の企画製造卸売 CLSAキャピタルパートナーズ
2019年3月 アウトルックコンサルティング クラウド対応型 ERP ソフト アスパラントグループ
2019年3月 三共理化学 総合研磨メーカー カーライルグループ
2019年3月 トキワ 化粧品研究開発製造 カーライルグループ
2019年3月 ミトヨ 自動車用プラスチック・ゴム・金属製品のメーカー ベーシック・キャピタル・マネジメント
2019年3月 日精 産業用機械等販売 みずほキャピタルパートナーズ
2019年4月 クオルテック 電子部品・車載製品等の分析等 ライジング・ジャパン・エクイティ
2019年4月 アソシエ・インターナショナル 認可保育園・学童保育クラブ等運営 日本プライベートエクイティ
2019年5月 ウエタニ 店舗内装工事施工等 AJキャピタル
2019年5月 ケイワイトレード 通訳・翻訳サービス ベーシック・キャピタル・マネジメント
2019年5月 エコサイクル 土壌浄化の総合サービス オリックス
2019年5月 中井工業 薄膜コーディング総合メーカー J-SATR
2019年6月 アビタス、東京中央日本語学院 教育事業 アドバンテッジパートナーズ

上記のように多くの未上場企業が、事業承継のパートナーとしてPEファンドを選択していることが分かります。中には、創業家での経営を継続したい場合においても、第一創業の利益を確定させ、第二創業の経営基盤を安定化する目的で、PEファンドを活用し、最終的にはIPO又は自社株買いにより創業家での経営を継続させる事例も増えております。事業会社への事業承継では実現できないことも、PEファンドを活用することにより、実現可能かもしれません。

さいごに

弊社は、完全独立系のM&Aアドバイザリー会社として、現在約60社を超えるいわゆるPEファンドと取引があります。PEファンド毎に投資規模・得意な事業領域・投資手法・投資後の支援体制・投資後の支援策・ストックオプション・出口戦略(EXIT)・出資している株主など様々であり、基本的な考え方が同じであっても、具体的な提案は一つと言って同じものはありません。海外進出支援に強みを持つPEファンド、その中でも東南アジア進出に強みを持ち実績を有するPEファンドや中国に特化しているPEファンド、IPOを得意としており豊富なIPO支援実績を有するPEファンド、その中でもIPOにコミットできるPEファンド、製造業を得意とするPEファンドやサービス業を得意とするPEファンド、投資担当者が常駐するPEファンド、グループ会社の豊富な営業リソースを活用できるPEファンドなど、本当にPEファンド毎に異なる特徴を有しております。
弊社では、各PEファンドの得意な事業領域や具体的な支援策などの特徴を把握しており、事業承継を考える未上場の置かれた状況に合わせて、各PEファンドから最適な提案を引き出すことが可能です。
中長期な視点での企業成長にコミットする事業承継のパートナーとして、PEファンドの活用を検討してはいかがでしょうか。今後のコラムではPEファンドを活用した事業承継の具体的なスキームなどをご紹介したいと思います。

この記事の執筆者
米国公認会計士(ワシントン州)島田 光太郎

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