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中小M&AにおけるPMIを考えてみる

2022.07.06コラム

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M&Aの失敗の原因の一つにPMIの失敗がある

 昨今M&Aの実施件数が事業承継型M&Aの増加もあり、年々増加傾向にあります。そしてその数だけ、PMI(Post Merger Integration:買収後の統合プロセス)があります。日本では昔から実施されたM&Aの7割は失敗(6割と言う人もいるし、8割と言う人もいる)と言われており、その原因として「PMIの失敗」が指摘されています。せっかくコストをかけてM&Aの実行が成功してもPMIの失敗により、M&Aが結果的に失敗(当初想定していたシナジーが出せない、むしろ業績が落ちてしまった等)してしまっては意味がありません。そこで今回のコラムでは「PMI」をテーマにしてみたいと思います。

PMAには「経営の統合」と「業務の統合」の2つがある

 まずPMIのプロセスは、大きく分けて、①経営の統合と②業務の統合の2つのプロセスがあると言われています。①経営の統合では、マネジメント体制の検討や理念・戦略の共有が重要となり、②業務に統合では、事業、会計・財務、法務・総務、IT等の統合が挙げられます。①経営の統合は経営の根幹なので当然に最重要の課題ですが、①の経営の統合がうまくいったところで、②の業務の統合がうまくいかなければM&A実行時に想定していたシナジー等が実現されません。そのため①経営の統合と、②業務の統合、の2つの統合プロセスを両輪として着実に実行する必要があります。また②は優先順位をつけて実施する必要があります。特に中小企業はカネとヒトのリソースが限られているので、全プロセスで専門家を起用して統合作業を実施することは難しいはずです。そのため優先順位をつけて専門家を活用して進めるプロセスと、自社内のリソースで進めるプロセスに分けて、効果的かつ効率的に進める必要があるでしょう。

PMIを効果的かつ効率的に進めるためには

 次にPMIを効果的かつ効率的に進めるためには、M&Aプロセスにおけるデューデリジェンスと株式価値算定を戦略的に実施することも重要です。PMIを意識したデューデリジェンスを実施することで、②業務の統合における優先順位が早い段階で明確になり、また株式価値算定を戦略的に実施することで、早くから対象会社の事業計画をPMIを意識した視点で検討することができます。加えて、これら検討には必ずPMIを関与する社内のメンバーを入れて実施することが肝要です。専門家はあくまでその領域の専門家にしかすぎず、会社のことを理解しているわけではありません。そのためPMI:統合という会社と会社の「接点」に係る作業は専門家任せにせず会社のメンバーもプロジェクトに参加し、しっかりと関与することが成功の秘訣となります。

中小PMIガイドラインが参考になる

 日本でもPMIが全く意識されていなかったわけではなく、大手の上場会社を中心としてM&Aの実施後、欧米の大手戦略コンサルティング会社等を起用して実施されてきました。しかし欧米の大手戦略コンサルティング会社の報酬は多額であるため、その活用は限定的でした。この点、2022年3月17日に中小企業庁が「中小PMIガイドライン(*)」を公表し、中小企業におけるPMIを整理してわかりやすく説明するとともに、中小企業でも活用できる中小PMI支援メニューも公表しています。このガイドラインは中小企業だけでなく、上場企業でも参考になると考えます。是非、一読してみてください。

参考情報

* 「中小PMIガイドライン」

この記事の執筆者

この記事の執筆者
公認会計士 門澤 慎

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