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親族外事業承継におけるセカンド・オピニオンの必要性

2021.04.09コラム

親族外事業承継におけるセカンド・オピニオンの必要性

中小企業庁はM&A専門業者には資格も法規制もない点を指摘

事業承継問題が社会問題化している中、M&Aを活用した親族外事業承継が活発化しています。しかしM&Aアドバイザーには国家資格や能力条件、実務経験がなくとも誰もがM&Aアドバイザーを名乗れるため、M&A会社によってはアドバイスの質に問題があり、中小企業庁が2020年3月に公表した「中小M&Aガイドライン」でも以下のような注意喚起がなされています。

一方で、士業等専門家については法令において資格要件、業務内容、善管注意義務や刑罰等が明確にされている(各専門家団体における懲戒処分等による制裁も存在する。)ものの、M&A専門業者については、許可制・免許制等は採用されておらず、業界全体における一般的な法規制も存在していない(例えば、不動産取引においては、宅地建物取引業法の規制が存在するが、M&A専門業者についてこのような法規制は存在していない。)。
また、中小M&Aを支援する際には、マッチング能力や交渉に係る調整ノウハウ、更に、財務・税務・法務といった分野の専門知識が不可欠となるケースが多くあるが、支援経験や知見の乏しいM&A専門業者等の場合には、適切に業務を進められないおそれがあると言える。
引用:中小企業庁「中小M&Aガイドライン」

中小企業庁は他の支援機関から意見を求める「セカンド・オピニオン」の活用を推奨

また親族外事業承継におけるM&Aでは仲介会社が関与するケースが多いですが、仲介会社は売り手と買い手の双方から報酬を受領するため、利益相反の問題もしばしば指摘されます。

仲介者においては、譲り渡し側・譲り受け側間において利益相反のリスクがある(利益相反が直ちに違法となるものではない。)。例えば、譲り渡し側が譲り受け側に会社の事業を譲り渡す場合(事業譲渡)、譲り渡し側にとってはその代金(譲渡対価)が高い方が望ましい一方、譲り受け側にとっては譲渡対価が安い方が望ましく、構造的に譲り渡し側・譲り受け側の両者間において利益相反の状況が存在するといわれる。
引用:中小企業庁「中小M&Aガイドライン」

この点、「中小M&ガイドライン」では、セカンド・オピニオンの活用を推奨しています。

セカンド・オピニオンとは、中小M&Aを行おうとしている者が支援機関と契約を締結する際や、支援機関から受けた助言の内容の妥当性を検証したい場合等に、他の支援機関から意見を求めることをいう。
引用:中小企業庁「中小M&Aガイドライン」

また、仲介者が参考資料として自ら簡易に算定(簡易評価)した、概算額・暫定額としてのバリュエーションの結果を両当事者に示す場合には、以下の点を両当事者に対して明示すべきである。
・あくまで確定的なバリュエーションを実施したものではなく、参考資料として簡易に算定したものであるということ
・当該簡易評価の際に一方当事者の意向・意見等を考慮した場合、当該意向・意見等の内容
・必要に応じて士業等専門家等の意見を求めることができること
引用:中小企業庁「中小M&Aガイドライン」

仲介会社は売り手と買い手の双方と契約をするため、売り手または買い手だけのためにアドバイスを行うことが構造的にできないと言われています。そのため、売り手または買い手がM&Aのプロセスや契約内容の検討、株式価値の妥当性を、それぞれの立場でしっかりと検討する場合は、別途、専門家にアドバイスや意見を求める必要が出てくるでしょう。そのアドバイスや意見が「セカンド・オピニオン」と呼ばれるものとなります。

増加する事業承継型M&Aの適切な進行に向けて、弊社でもセカンド・オピニオン業務を開始

今後、事業承継型M&Aが益々増えていく中でこのセカンド・オピニオンの重要性が増すと言われておりますが、一方でまだまだセカンド・オピニオン業務を提供できる専門家は少ないと思われます。今後はM&Aのアドバイザーだけでなく、セカンド・オピニオンを提供できる専門家の育成も急務となると考えます。
この2月より弊社も親族外事業承継におけるセカンド・オピニオン業務を開始しました。代理人型のM&Aアドバイザリー業務だけでなく、セカンド・オピニオン業務もしっかりと提供できる体制をこれまで以上に強化していきたいと思います。

参考情報

中小企業庁 中小M&Aガイドライン ―第三者への円滑な事業引継ぎに向けて―

この記事の執筆者

この記事の執筆者
公認会計士 門澤 慎

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