今回はちょっと公認会計士的な視点で書いてみました。
昨今、日本では、こんな企業が??という大企業の不正会計が発覚し大事件になるといったことが良く起こっています。
ちょっと前ではカネボウ事件があり、その後、大手証券会社や、超一流メーカー等、まさかの日本を代表するような超一流企業でも何社も会計不正が発覚しており、
その他、金額がそれほど大きくなかったり、子会社での不正等会計を挙げれば、それなりの数の事例があるのではと思います。
監査体制はしっかりしているのにもかかわらず。。。
我が国では、まず上場する際に証券取引所や証券会社、監査法人から上場してからもしっかりした決算を行っていける体制と、その内部統制も構築されているよね?という観点で厳しい審査を受けます。
そして上場した後も、監査法人から四半期に1回レビューを受け、期末では監査を受けます。
制度としては、ちゃんと会計不正が起こらないようにしているのに、なぜこんなに事件が起きるのか、公認会計士の私としても疑問に思う時があります。
不正会計が起きてしまうその要因とは?
色々と考えられる要因はあります。
- 経営者が売上、利益の増収増益に固執し現場に過度なプレッシャーを与えることにより現場が一線を踏み越える事例
- 経営者自らが株価を挙げたいがために一線を踏み越える事例
- 担当者が自己の成績を上げたいがために一線を踏み越える事例等
などなど。。。
企業が受ける監査は、以前は財務諸表監査だけでしたが、エンロン事件に端を発して、企業の内部統制が注目されたため、企業の内部統制がしっかりと構築されていることを確認するために内部統制に係る監査も制度化されたんですが、それで結局、粉飾等が減ったのかなというと、うーん、という感じです。
(経営者が内部統制を無視した場合、従業員から適時にそれを是正するのは困難ですね)
監査制度の限界?
まあ、色々と課題があるとは思いますが、監査という視点で考えた場合、企業が監査報酬を監査法人に支払うといった今の監査制度に重要な問題(限界)があると個人的に考えています。
特に「お客様は神様だ」の文化のある日本では、どうしても監査法人にとって企業は「お客様」になってしまいますし、
クライアントを失うと担当会計士の成績に響いてしまうといった文化が監査法人にある以上(最近は是正されてきたとも聞きますが)、
個々の会計士が自分の意見を貫くには限界があります。
また金融取引や資本政策が高度に複雑化していく中で、基本的に監査法人しか経験していない会計士だけで監査するのには実力面でも限界があるでしょう。
(もちろん監査法人内にも優秀な会計士はたくさんいますが、そうでない人も残念ながら一定数います)
例えば監査報酬は企業が取引所に支払うことで企業と監査人との監査報酬に係る交渉等がなるようにする(利益相反関係の解消、取引所が監査報酬を監査法人に分配)といった仕組みを導入するなり、
他業界で経験を積んだ会計士を監査法人としてを積極的に採用して重用する、といったことを実施し、
監査法人を取り巻く内外の環境を大きく変えない限り、監査制度による不正会計の発見防止機能には(監査が想定している限界以上の)限界があると思われます。
M&A実務でも重要な会計監査制度と財務諸表への信頼性
M&A実務でも、企業の財務諸表の分析は必須業務です。財務諸表を分析することで、企業の正常収益力や実態純資産を把握し、その情報をベースに事業計画を作成して、株式の価値を検討します。
M&A実務はそれら分析の前提である財務諸表の信頼性が担保されてはじめて前に進めることのできる業務となります。(財務諸表の信頼性が乏しいと、財務諸表を確認する業務の負荷が格段に増えます。)
そのためM&A実務においても、企業が作成する財務諸表の信頼性を担保する会計監査制度は非常に重要なので、その信頼性を損なわないような実効性のある制度の再構築が必要なのではないか、と考えます。
- この記事の執筆者
- 公認会計士 門澤 慎