
2023年1月のコラムでも記載の通り、中小企業庁は令和3年8月より、令和3年4月28日に中小M&Aを推進するための今後5年間に実施するべき官民の取組を取りまとめた「中小M&A推進計画」に基づき、M&A支援機関に係る登録制度を創設しました。中小M&Aガイドラインの遵守を宣言することを要件とすることで、M&A支援機関の質を担保するための制度となります。前回コラム記載時の時点での登録者数は2,817社で、かつ全登録機関の70%程度が0~2名規模となり、10名以上は4%程度しかありませんでした。また全体の半分程度は2020年代に設立された組織とでした(つまりこの1~2年以内)。その後、1年以上経過しましたが、中小M&A支援機関の現在の状況はどのようになっているのでしょうか。

上記のグラフは、中小企業庁が断続的に発表している、中小M&A支援機関登録者数の推移をグラフにしたものです。前回コラム時の2023年1月時点では2,817社でしたが、2024年7月時点では2,752社と微減しています。またこの間、2023年7月と2024年7月は前回発表時と比べ、登録者数が大きく減少しています。これは中小M&A支援機関は、中小企業庁に対して毎年、実績報告を6月末までに行うとともに、その際に登録継続の意思確認を行われるためであると推察されます。また2024年6月は、実績報告に加え、各社の標準手数料体系を報告し、中小M&A支援機関のHPで公開することも義務付けられました。この影響も一定程度あったはずです(つまり開示したくない支援機関が一定程度、存在した)。
その他、全登録機関の大半が0~2名規模であること、全体の半分程度は2020年代に設立された組織であるという傾向自体は前回コラム時と同様変わりません。しかし登録継続の意思確認を毎年行うこと、手数料体系開示の義務付け等などを通して、質の悪い支援機関や実質的に稼働していない(M&Aのアドバイスを行えていない)支援機関を減らしていくことで、M&A支援機関制度の実効性を担保していく上でも必要なことであると思われます。今後の課題としては、もう少し踏み込んで、例えば一定程度の実績基準(●年間で●件以上の実績がない支援機関は登録継続不可)を設けることで、より中小M&A支援機関の質を上げていくことも現時点の登録者数を鑑みると必要なのではないか、と考えます。
過去コラム
M&A支援機関登録制度からみる、中小M&Aアドバイザー業界の今
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- 公認会計士 門澤 慎