
前号ではかつて日本で「ハゲタカ」と呼ばれたようなPEファンドは(極めて)少なくなり、我が国でもM&Aの買い手候補先として、PEファンドが一般的になってきた、というお話をしました。本号ではPEファンドについてもう少し深掘ってみたいと思います。
PEファンドを分類する切り口として、「サイズ」と「属性」の2つが挙げられます。「サイズ」はPEファンドの大きさ=M&Aに使える資金総額です。そして「属性」はメインでお金を出している投資家の種類です。サイズが大きければ大きいほど買収のターゲットとなる会社の規模が大きくなり、メインの投資家の属性によってファンドが得意とする(好む)領域が変わってきます。他にも様々な切り口があるかもしれませんが、まずはこの2軸でファンドを検討すると、ファンドがクリアに見えてくることでしょう。
サイズについては、「スモール」、「ミドル」、「ラージ」と大きく3区分に分けて整理することができます。対象とする案件の規模(買収金額)を、~50億円、50億円~100億円、100億円以上と区分し、それぞれの区分を「スモール」、「ミドル」、「ラージ」とします。PEファンドによってはそれぞれの区分をまたいでターゲットにする場合も多々あるので、明確に区分することはできないかもしれません。また最初は「スモール」だったPEファンドでも、2号ファンド、3号ファンドと、投資家からの資金調達を繰り返すことで対象となるサイズが大きくなるPEファンドも多数あります。しかし、大まかでもこのように整理することで、初期的に買い手候補先となるPEファンドはどこになるのか、検討しやすくなります。

次に「属性」です。属性は昨今、多様化しており簡単に区分することが難しくなってきていますが、大きく分けて、以下の分類ができます。
➀金融機関系:大手銀行や証券が中心だが、昨今は地元の事業承継問題解決を目的として地銀のPEファンドが増えている
②商社系:大手総合商社が中心。投資先の海外展開支援や販路拡大支援に強みを持つ
③コンサル系:戦略コンサル系のメンバーが中心となって設立したPEファンド。様々な経験を持つ戦略コンサルタントが投資先の支援を入り込んで行う
④独立系:過去に多数の成功事例を持つメンバーで設立されるケースが多い
⑤外資系:海外支援に強いが、一般的にサイズが大きいため、スモールやミドル(の下限)の案件は取り扱わないケースが多い
このように「サイズ」と「属性」でPEファンドを分類して検討すると、どのPEファンドを買い手候補先にすべきなのか、(何となく)見えてきます。その上で、各PEファンドの過去の投資実績なども分析すると、より各PEファンドの得意領域や特徴がクリアになります。昨今ではPEファンドも事業承継案件であっても有力な買い手候補先となります。是非、皆様も本コラムも参考にしてPEファンドを検討してみてください。
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この記事の執筆者
- この記事の執筆者
- 公認会計士 門澤 慎