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株式譲渡契約書の締結後にやること ~クロージング手続き~

2023.03.02コラム

株式譲渡契約書の締結後にやること ~クロージング手続き~

株式譲渡契約書締結の次に「クロージング」手続きがある

 会社を売却する、買収するといったM&Aのプロセスは短くても半年程度で1年程度かかる場合もあり、とても長く、そしてその密度も高いです。そのためM&Aプロセスのゴール(の一つ)である株式譲渡契約書に調印ができると、関係者は(心の底から)ホッとすることでしょう。やっとこのプロセスが終わってくれたと、、、しかし、実はまだM&Aは終わっていません。M&Aのゴールはあくまで買収金額を支払いと株式を受け取る(売り手であれば、売却金額の受取りと株式の引き渡し)が完了した時です。この手続きが終わって、やっとM&Aプロセスが終了となるのです。このように買収金額の支払いと株式の受取りをクロージングといい、株式譲渡契約書の調印からクロージングまでの間をクロージング期間、そしてそれに関連する手続きをクロージング手続きと言います。

クロージングするためには、クロージングの前提条件を満たす必要がある

 それでは次に、この「クロージング」についてもう少し説明したいと思います。クロージングとは(専門的な言葉で説明すると)「クロージングの前提条件が全て充足していることをもって、買主が譲渡金額全額の支払いをすることと引き換えに、株主名簿名義書換請求書(株券発行会社であれば株券も)を買主に交付する」ことを言います。一般的には株式譲渡系契約書締結からだいたい2~4週間程度かかることが多いです。それは(あくまでも一例ですが)以下のような要件を満たす(確認する)必要があるからです。

  • 株式譲渡契約締結時点の表明保証の内容に変化がないこと
  • クロージング日までの前日までに株主総会(又は取締役会)において譲渡の承認がされていること
  • (取締役変更の必要がある場合は)クロージング日の前日までにクロージング日をもって対象会社の取締役を辞任する旨の辞任届を会社に提出していること
  • 要承諾取得契約の相手方から承諾書を取得していること
  • 要通知契約の相手方に通知が完了していること
  • 事業、資産、負債、財務状態、経営成績、事業価値、キャッシュフロー、将来の収益計画又は収益の見通しに重大な悪影響を及ぼし得る事象が生じていないこと
  • 付随契約の調印が完了していること(経営委任契約書、株主間契約書など)

 

クロージングの前提条件の中でも、COC(チェンジオブコントロール)対応には注意

 特に上記の中でも、要承諾取得契約や要通知契約の確認は重要で特に煩雑となります。専門的な言い方ではCOC(チェンジオブコントロール)対応と言います。会社が取引先等と契約する際、契約書をよくみてみると、その中に、株主が変わった場合は通知や承諾が必要、という記載がしばしばあるでしょう。これは通常では特に意識しない条項なのですが、M&Aにより株主が売主から買主に変更する場合に該当してしまうことになります。買い手から見ると、株主が売り手から買い手になった後、取引先との取引が当初条件で承諾されなかった場合、ビジネスに大きな影響を与える可能性があります。そうなると当初想定していた価値やシナジーが実現されないことになってしまいます。そのため、そのリスクを事前に防止するため、株主が変わっても問題ないことを確認する手続きが必要となるのです。

COC対応は株式譲渡契約書締結後に対応することが一般的

 そしてこの手続きは、一般的には株式譲渡契約書を締結してからではないと、なかなか動くことができません。なぜならまだ交渉中の状態で売主が取引先に株主が変わる(かもしれない)ことを伝えることになるからです。もしかしたら取引先経由で、売り手の会社が売りに出ているとか、(そうではないのに)経営が厳しいようだ、みたいな噂が業界に広まってしまうこともあります。そうなるとM&Aプロセスにも影響を与えますし、そもそも業績に悪い影響を与えるかもしれません。そのため一般的には株式譲渡契約書が締結されてから、一定程度の時間を確保して、取引先に通知をしたり承諾をもらいにいくことになります。

クロージング手続きも気を抜かずにやることが重要

 クロージング手続きは意外と見落とされがちな手続きですが、非常に重要で、そしてM&Aプロセスにおける最後のプロセスとなります。株時期譲渡契約書の締結が終了し、ホッとすることと思いますが、クロージング日の最後まで気を抜かず、着実にプロセスを進めることが重要となります。

この記事の執筆者

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公認会計士 門澤 慎

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