
みなさん、いざ自分の会社を売却する時、どのくらいの期間がかかるかイメージできますでしょうか。「会社を売却するのだから1年~2年はかかるだろう」、「いやいや、どこかの仲介会社の広告では3か月程度、と書いてあったよ」等、私も顧客から色々な内容をお聞きします。当然、案件の内容によってそれぞれ必要な時間は変わってきますので、画一的な期間を示せるものではありません。しかし会社を売却するために必要なM&Aプロセスはどの案件でもそこまで変わりません。そのためその各プロセスを検討することで、最終的に会社を売却するための一般的に必要な期間が見えてきます。それでは、会社を売却するために必要な一般的な期間はどのくらいなのでしょうか。

上記の図は、売り手のM&Aプロセスをまとめたものになります。ここではM&Aのプロセスを大きく、①事前準備、②一次入札、③二次入札、④最終条件交渉、⑤クロージング手続き、の5つに分けています。①事前準備では、この後M&Aを進めていくための準備全般と特に買い手候補に説明する資料作成を行い、②一次入札では初期的な買い手候補先への打診を行います。ここで有力な買い手候補先が見つかり、初期的な条件で合意できた場合、より買い手候補に詳細な情報を開示するプロセスである③二次入札(DDプロセス)に入ります。ここでは買い手が主に財務・税務・法務の専門家を使って売り手の会社に対して調査を実施します。②で提案した価格の前提にズレがないか、会計・税務面で大きなミスが起きていないか、契約や許認可、訴訟等で問題がないか、等の確認を行います。そしてこのプロセスで大きな問題がなかった場合、④で株式譲渡契約書の内容について交渉を行い、合意して調印した後は、⑤で調印後でしか対応できない論点等の対応をして、無事決済となります。それなりにやることはありますね。。。
この5つのプロセスは、それぞれ、とても順調にいけば①1.5か月程度、②1.5か月程度、③1.5か月程度、④半月程度、⑤1か月程度で、合計6か月となります。ただこれはとても順調に進んだ場合で、例えば①で準備に時間がかかったり、②で買い手候補先の打診と初期的な検討で時間がかかるケースもよくあります。また③のDDでも2か月程度かかる場合も時々発生します。そのため、私はそのようなリスクも鑑み、会社を売却するための時間は概ね6か月~8か月と回答するようにしています。もちろんこれ以上かかったケースもしばしばありますが、一方で6か月よりも短いケースはあまりないかもしれません。
冒頭にも書きましたが、「●●日で売却!」、「早期売却可」、といった仲介会社等の広告を目にすることがあります。もしかしたら実際にそのようなケースが本当にあったのでしょう。しかし会社を売却することは一朝一夕にできるものではなく、むしろ無理に期限を短くしようとすると、上記の5つのプロセスのどこか(または全部)にひずみが出てしまいます。これでは満足のいく会社売却ができません。みなさんもM&A会社とスケジュールの話を聞く際は、この点をよく注意して聞いてください(特に早くできますよ、と言われた場合は。。。)。
この記事の執筆者
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- 公認会計士 門澤 慎