これまでのコラムでもコロナ環境下におけるM&A件数についてコメントしてきましたが、今回は2019年、2020年、2021年2022年のM&A件数における年度比較と同月比較を行い、2022年度のM&Aがどの程度回復したのか見てみたいと思います。なおM&A件数は「買収」と「事業譲渡」の合計件数をカウントしています。
まず年度別比較は以下の通りです。
コロナの影響を受けない2019年度の1,844件に対して、コロナ初年度の2020年は1,578件を大きく減少したことがわかります。2020年4月に発令された第1回目の緊急事態宣言の影響やワクチンがなかったことによる影響、そしてそもそもコロナが未知のウイルスであるという心理的な影響が大きく影響したものだと推察されます。それに対して、2021年度は緊急事態宣言は出るものの全体の件数としては1,753件と、2020年度と比較する一定程度回復しています。2022年度についてもその傾向はあまり変わりません。2022年度の件数は1,746件と2021年度とほぼ同数です。コロナに対する心理的抵抗が薄まってきていることを考えると、もう少し回復してもいいように思えました。もしかしたら、ウクライナ戦争による影響、インフレによる影響など、景気全体の先行きに対するリスク回避が働いたのかもしれません。
それでは次に、月次で見てみたいと思います。月次は以下の通りです。
月次で見ると、2022年度は日次の新規コロナ感染者が10万人を超えた7月に大きく減少していることが分かります。そこからは(特に日次の新規コロナ感染者が減少していないものの)緩やかに件数は回復し、12月は2019年度とほぼ同水準まで回復しています。
このままの傾向だと2023年度は2019年度と同水準まで回復することが想定されます。一方で2023年度は中央銀行による利上げやインフレによる景気後退リスクが指摘されています。かつてリーマンショック時にはその後数年間はM&Aの冬の時代を迎えたことを考えると、2023年度もリーマンショックと同様の流れにもなることも推定できます。しかし特に国内のM&A市場に目を向けると、事業承継問題はまったなしの状態です。そのため2023年度の件数は、クロスボーダー等の大型M&Aの件数は減少するが、その分事業承継型M&Aが件数的には穴埋めすることで、M&A件数自体はは堅調に推移するものだと推察します。
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- 公認会計士 門澤 慎