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コロナ環境下におけるM&A件数の推移②

2021.03.03コラム

昨年の2月頃から我が国でも新型コロナウイルスの経済に与える影響予測が急速にネガティブとなり、M&Aの件数も3月から4月にかけて大きく減少したことは前号(2020年5月28日号)でも記載した通りですが、その後、M&Aの件数はどのように推移したのでしょうか。


出典:株式会社レコフより収集し、弊社にて作成

1回目の緊急事態宣言解除後は緩やかに回復

2020年4月7日に東京を中心とする7都道府県に対して緊急事態宣言が発令され、4月16日には全国に拡大されました。その影響で一部出資等の案件を含む総件数では、2020年3月で369件だった件数が2020年4月251件、2020年5月219件と大きく減少し、買収と事業譲渡の合計件数でも、2020年3月は186件であった件数が、2020年4月は77件、2020年5月は92件と減少しました。

一方で2020年5月21日に緊急事態宣言が解除された以降は、新型コロナウイルスによる緊張状態は引き続き継続しつつも2020年10月には総件数で312件、買収+事業譲渡件数で144件まで回復し、2020年12月でも総件数318件、買収+事業譲渡件数151件と緩やかながら回復傾向となりました。

再び緊急事態宣言が発令される

しかし2020年5月21日に緊急事態宣言が解除された以降、新型コロナウイルスの新規感染者数が再び増加し、2021年1月7日には東京で2,520人/日となるまで増加したことで、1月7日に1都3県に対して再び緊急事態宣言が発令され、1月13日には7の府県を加えた11都府県に拡大されました。

この影響に伴い、2021年1月は再びM&Aの件数も減少傾向に転じています。もともと1月は正月休み明けかつ年始特有の企業活動等でM&Aの件数も減少する傾向にありますが、2019年12月-2020年1月と2020年12月-2021年1月の減少率を比較すると、2019年12月-2020年1月の減少率は総件数で26.1%、買収+事業譲渡件数で28.9%に対して、2020年12月-2021年1月は総件数で31.8%、買収+事業譲渡件数で31.1%と減少率が拡大していることが観察できます。

新型コロナウイルスはM&Aのプロセスにも影響を与える

緊急事態宣言が発令されると、企業によっては出社や出張が大きく規制されるため対面での面談が難しくなります。そのため進行中の案件においてもトップ面談ができないことで案件が止まってしまったり、出社制限で資料準備等が困難となることでデューデリジェンスがスケジュール通り進行しなかったりと、様々な影響が出てきます。これら要因が緊急事態宣言によるM&A案件の減少要因の一つに挙げられるでしょう。

我が国でもZoomやMeet等、web面談ツールも急速に普及しつつありますが、M&Aのプロセスでは、条件の交渉だけではなく双方の考え方や理念・文化の理解等も非常に重要なため、どうしてもweb面談ツールだけではカバーできない部分も出てきてしまいます。特に昨今の我が国におけるM&A件数を押し上げている親族外事業承継の案件においてはよりその傾向が顕著に表れると思われます。
簡単には収束しない可能性もあるコロナ環境下でしっかりとM&Aを進めていくためには、試行錯誤しながらも、その環境に合わせたプロセスの構築と進め方で実行する必要があります。

この記事の執筆者

この記事の執筆者
公認会計士 門澤 慎

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