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株式価値算定で留意すべき売り手目線の決算書の読み方

2020.02.27コラム

会社の価値評価をする際は、どのような評価方法を選択しても、決算書(貸借対照表、損益計算書)を使うことになります。決算書を分析することで会社の価値を算定することになります。そのため決算書をしっかりと読み解く力が非常に重要となります。

株式価値算定で留意すべき売り手目線の決算書の読み方

買い手のデュー・ディリジェンスでは、財務諸表が隈なくチェックされる

M&Aのプロセスの中ではデュー・ディリジェンスというプロセスがあります。
これは買い手が対象会社を財務・税務・法務の観点を中心として専門家を使って調査をするプロセスです。
簿外の負債(保証債務や未払残業代等)が見つかったり、決算書上の営業利益と正常的な営業利益の水準にズレがあったり、誤った税務処理が発見されたりする場合などは、修正後の貸借対照表や損益計算書をベースに価格が修正されることになります。
このプロセスでは、買い手が売り手の対象会社を調査するため、売り手は受け身になりがちです。また多くの場合、このプロセスで何か見つかった場合は価格の減額要因になります。

売上獲得には必ずしも必要とは言い難い「オーナーコスト」をしっかりと調整

売り手が事前に決算書を分析して買い手としっかりと(高い価格で)交渉できるようにするには、どのような視点を持てばよいでしょうか。

それは事前に決算書に隠れている資産や利益をしっかりと把握することです。
例えば損益計算書には「役員報酬、交際費、保険料、支払手数料」等の科目があります。
特に未上場のオーナー企業等では、以下の一例の通り、会社の売上には必ずしも必要とは言い難い費用(適正な金額を超過した部分)であるにも関わらず全額販管費に計上されるため、その分営業利益が減額されています。
これではその会社の正常な営業利益(=実力値)を把握することができません。

  • 比較的多額な役員報酬を支払っている会社
  • 交際費の基準が大企業に比べて緩い会社
  • 節税目的の保険を契約している会社
  • 親族等に顧問料等を支払っている会社

これら費用には売上獲得に直接関連しない費用(オーナーコスト)が含まれているケースが多々あります。その場合はこれら費用を調整した正常な営業利益をベースとして会社の価値を算定する必要があります。

貸借対照表では、簿価と時価を見極め、「含み益」に着目

同じことが貸借対照表でも言えます。例えば貸借対照表には「土地、有価証券、保険積立金」といった科目があり、これら科目は多くの場合、貸借対照表上では簿価評価されています。
しかしこれら科目を時価評価した場合、大きな含み益があるケースが散見され、その分、会社の価値が増加することになります。
ただし土地については、事業で活用している土地については評価方法によっては事業資産として分類されるため土地自体の時価と簿価の差額が直ちに会社の価値に影響を及ぼさない場合もあります。
しかしそれでもしっかりと時価を把握することは、その後の価格交渉において武器になることでしょう。

売り手の目線に立って会社の価値を算定できるアドバイザーを起用

このように事前に売り手として決算書をしっかりと分析ししっかりとした価格目線を持つことが、買い手の考え方のみを押し付けられることなく、納得できる交渉を進めることの一助となります。
ただし売り手のオーナーが自ら決算書を分析して価値評価を実施することは中々難しいかもしれません。
そのためこれらの視点でしっかりと決算書を分析できるアドバイザー(できれば仲介会社ではなく、売り手専属のアドバイザー)や株式価値評価に強い専門家に依頼することが肝要となります。

この記事の執筆者

この記事の執筆者
公認会計士 門澤 慎

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