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失敗しないM&A

2021.12.24コラム

失敗しないM&A

 我が国でも企業の成長戦略の重要な手段としてM&Aが一般化してきました。2012年から2019年にかけて日本企業が関わるM&Aの件数が増加しており、コロナ禍においても緊急事態宣言等で一時的に減少するものの年間では堅調に推移しています。特に日本の経済成長率が大きく低下している中で企業は成長をしていなかいといけない(と株主や投資家に言われる)ので、今まで以上にM&Aという手段が活用されることと思います。それではこれほどまでに増えてきたM&Aですが、実際にどれくらいの成功しているのでしょうか。

 いくつかの本やネットでの媒体を見ると、M&Aの成功率は30%~40%と言われているようです。ということは半分以上のM&Aが失敗をしているということになります。失敗にも色々な見方があると思います。買収した会社が無価値になってしまった案件や想定ほどのシナジーを生み出さなかった案件、また最終的にはうまくいったが想定を超える年月や時間、リソースがかかった案件もこの「失敗」の定義に入るかもしれません。いずれにせよ、当初の想定通りにはならなかったということには違いないので、そのような案件が60%~70%程度だということでしょう。

 次に「失敗」の理由を検討している本やネットの媒体を見ると、想定外の外部環境の悪化、企業文化の融合の失敗、などの理由とともに、PMIの失敗がよく挙げられています。PMIとは、Post Merger Integrationの略で、M&A後の統合作業を指します。つまりM&A実施後、買収企業と被買収企業のガバナンスや戦略を融合させ、想定したシナジーを創出するためのオペレーションを統合する作業がうまくいかなかったということです。このことは最近、よく言われていることで、私も「失敗」の要因の一角を占めると思います。M&Aを実行したことで満足をしてしまったり(もしくは力尽きる)、M&Aプロセスの主要な担当者が買収後に関与しないこと(部署が違うから)で、時間もコストもかけた情報がしっかりと共有されなかったりすることもその一因となるでしょう。

 加えて個人的には、そもそも買うべきではない会社を買収してしまうことも「失敗」の大きな要因だと考えます。特に財務税務・法務デューデリジェンス(DD)を実施し、そのレポート内容を踏まえたバリュエーションを実施した結果、当初検討していた条件ではとてもじゃないけど買収できないような案件でも、ある程度のコストと時間をかけてDDやバリュエーションまでやったので何とか辻褄を合わせて買収してしまう(前のめり現象)、といったことが発生しているように思われます。

一義的には買収すべきでない条件で買収の意思決定をした買収企業の意思決定プロセスに原因がありますが、買収企業のアドバイザー(FA)やDD等のプレイヤー(弁護士・会計士・税理士等)も、その知見を活かした各自の専門性の観点でしっかりと意見を言っていない可能性もあると思います。難しい局面でもしっかりと意見を言えるのが「専門家」で、リスク回避的な行動により言うべきことを言わなかったり、顧客企業の顔色をみながら意見を変えるのが「業者」です。経験豊富な「専門家」を起用しその知見を有効活用し、買収すべきでない条件では(仮に一定程度のコストや時間がかかっていたとしても)買収しないといった意思決定ができる企業が増えていけば、M&A全体の「成功」の割合もおのずと増えてくるでしょう。

この記事の執筆者

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公認会計士 門澤 慎

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