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事業会社内でのM&Aの推進体制を考えてみる

2023.08.09コラム

事業会社内でのM&Aの推進体制を考えてみる

 昨今はどの企業でも中期経営計画等で成長戦略の重要な手段としてM&Aを挙げる企業が増えています。東証がPBR 1倍割れの企業に対して株価水準を引き上げる改善策を開示・実行するように要請したことからも見られるように、PBR 1倍割れの企業のみならず全ての上場企業は、マーケットから時価総額を引き上げるための強い圧力を受けています。そのような環境の中、自社のリソースのみでの事業を成長させるだけでは、圧倒的にスピードが足りないですし、またそもそもそのような活動はすでに日々やっています。そのため、かつては企業の成長戦略の中では飛び道具的な位置づけであったM&Aが、重要な手段として検討されるようになってきました。

 このような環境の変化によってM&Aの件数も増加し一般的に行われるようになってきましたが、M&Aを成長戦略の重要な手段に挙げているいずれの企業も、M&Aをしっかりと活用できているかというとそうではないような話もよく聞きます。「戦略には盛り込んだが、なかなか検討が進まない」、「M&A支援会社や金融機関に案件の紹介をお願いしているが、良い案件が出てこない」、「M&Aプロセスの推進がアドバイザー任せになってしまい、自社にナレッジが蓄積されない」、「アドバイザーをうまくコントロールできない」。こんな話はよく聞く話です。おそらくこのような会社は以下のような状態になっていることでしょう。

2023.8コラム 図解1

M&Aの案件情報を取得して初期的なプロセスまでを進める「ソーシング・フェーズ」では、M&A支援会社から案件が紹介されるのを待ち、紹介された場合にその案件を検討します。また「エグゼキューション・フェーズ」では、各専門家をアサインし、基本的にはそのプロセスを任せることになります。ここで問題なのは任せすぎてしまう状態です。企業が適宜に情報を入手できなかったり、企業側が重要だと認識している論点と専門家側が重要だと認識している論点にズレがあった場合、その対応が遅れるとスケジュールがタイトなM&Aでは、時すでに遅し、といった状態になります(案件がブレイクになるか、論点を飲み込むか)。そのため、上記のような受動的な体制ではなく、以下のような能動的なM&Aの検討・推進体制を作っていくことが肝要だと考えます。

2023.8コラム 図解2

「ソーシング・フェーズ」では、しっかと自社でやるべき案件をリストアップして、M&A支援会社も使いつつアプローチすること、「エグゼキューション・フェーズ」では、専門家に任せすぎるのではなく、自社の関連部署からも人を出し、プロセスをリアルタイムで確認することが重要です。また事業部の人間もプロセスに参加させることも重要となります。検討している事業の目利き(事業計画の策定・検討等の部分でも)はアドバイザーではなく実際に事業を担当している人間のほうがしっかりと理解できるはずです。また買収後のPMIにもスムーズに移行できることでしょう。

 私が内部に入って関与させて頂いている上場企業でも、最初はリソースがないから難しい等の話も当然に上がってきましたが、このような体制に変えて実際にM&Aのプロセスを進めたところ、自社の内部でしっかりとM&Aを検討・推進できる体制が整い始め、それに比例してM&Aの件数も少しずつ増えてきました。大なり小なりリソースの問題はどの企業にもあります。しかしどちらかというと(自社でしっかりとM&Aを進めていくぞ、という)意識の問題のほうが重要だと考えます。

この記事の執筆者

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公認会計士 門澤 慎

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