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社員の誰にも知られずに会社を売却することができるか⁈

2023.12.08コラム

社員の誰にも知られずに会社を売却することができるか⁈

会社の売却は、オーナー社長にとって非常に大きな決断です。取引先や社員にも大きな影響を与えることになります。そのため、会社を売却する決断をしたことについては、可能な限り社員や外部の関係者に知られたくないと考えるのが、一般的なオーナー社長の考えでしょう。それではこのまま最後までオーナー社長が一人でプロセスを進めていくことは可能なのでしょうか。

ここでポイントになるのがDDのプロセスです。一次意向表明や基本合意までのプロセスでは、事業や財務に関係する資料をオーナー社長がある程度準備できれば、あとはM&Aアドバイザーがサポートすることで乗り切ることができます。しかしその後のDDのプロセスは、そのような体制ではなかなか難しくなります。DDは、買い手候補が会計士・税理士・弁護士等を使って、売り手の会社を徹底的に(といっても限界はありますが)調べてきます。そこでは詳細な資料開示の依頼があったり、数多くの質問が飛んできます。これをオーナー社長が一人で対応するのは、一般的には現実的ではありません(中には、会社のことを全て把握している社長もいるので、そのような社長であれば何とか対応できるでしょうが)。そのためこのタイミングで、財務の責任者や営業の責任者の協力を得るために会社売却を検討していることを伝えることで、しっかりとDD対応をすることが可能となります。

一方で、諸々の理由でどうしても財務の責任者や営業の責任者に伝えることが難しい会社もあります。そのような場合は、顧問税理士を巻き込んで対応する会社も多いです。ただこの場合でも顧問税理士が対応できる範囲には限界があるので、結局は何かしらの口実(内部管理体制のチェックや、M&Aではないけど資本提携の話がきているなどなど)を作り、会社の人に資料の準備やQAの対応をしてもらう必要が出てくるでしょう。(あまりに不自然な口実や、伝えた内容と依頼する内容に大きなズレが出てしまうと、社員もなんとなく気づいてしまいます)

私が関与した案件で、どうしても社員の協力が得られない会社がありました。加えてオーナー社長もご高齢でとてもお一人では対応できるような状況ではなく、顧問税理士と頭を抱えていました。そのような中、(幸か不幸か)その会社に税務調査が入ることになったため、税務調査の対応に乗じてDD対応ができたといった案件もありました。

このように、会社を売却するプロセスは、可能な限りオーナー社長一人で進めたいものですが、一方でプロセスを進めるためには(特にDDプロセス)、どうしても(何かしらの)社内の協力が必要になります。そのため売却のプロセスを進める序盤のうちに、社内に売却プロセスを伝えて協力してもらえる人間がいるか、どのような理由なら売却プロセスの話をせずに(不信がられず)協力してもらえるか、顧問税理士はどこまで協力してくれるか(どこまで把握しているか)等を、事前にM&Aアドバイザーと相談しておくことが重要となります。

この記事の執筆者

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公認会計士 門澤 慎

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