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令和3年度税制改正 「株式対価M&Aを促進するための措置」について

2020.12.28コラム

令和3年度税制改正 「株式対価M&Aを促進するための措置」について

自社株式を対価とするM&Aの弾力的な検討が可能に

令和2年12月10日に公表された「令和3年度税制改正大綱」で「株式対価M&Aを促進するための措置」が創設されました。
経済産業省 「令和3年度税制改正について」

この制度により特に未上場の中小企業における事業承継の現場でも、自社株式を活用したM&Aが増えることが想定されます。
この制度は端的に言うと、買い手企業が売り手企業を買収する場合、対価として現金ではなく自社(買い手企業)株式を渡すことが「実質的」に可能となった、ということです。ここであえて実質的と書いた理由は、これまでもこの方法は理屈上可能でしたが、買い手の株式を受け取った売り手に対して(現金を受領していないにも関わらず)株式譲渡益課税がかかってしまうといったことや、類似制度としての平成30年度税制改正で制度化された産業競争力強化法に規定する一定の株式買収では認定手続きが必要であったりと、使いにくかった背景があったからです。

混合対価のM&Aなど様々なM&Aスキームが検討可能となる

また今回の制度では、対価のうち株式の価値が80%以上の場合は(対価のうち現金が20%以下の場合)、自社株式と金銭等の混在対価も認められることになりました。そのため一部現金を活用することで、売り手の売却条件にも一定程度、弾力的に応じることも可能となります。おそらく実務上はここが一番大きい部分かもしれません。株式対価M&Aで様々な選択肢を検討することができるようになるでしょう。

上場企業にとってはまだ実務作業のハードルが立ちはだかる。まずは未上場企業のM&Aでの活用から

一方で上場企業にとっては依然としてまだ使いにくい可能性もあります。税制のハードルは未上場企業と同様に使いやすくなりましたが、株式事務の問題はまだ解消されていません。例えば基準日の問題(効力発生直前の株主の確定作業)や、ほふりの問題、証券会社のシステム対応(証券口座内の株式付け替え)の問題等、実務作業上の問題が残っています。そのため上場会社のM&Aではこれらの問題がボトルネックになることで、すぐにはなかなか活用されないかもしれません。

未上場企業の株式対価M&Aだからこそ客観性を保った株式価値算定が一層重要に

このように上場企業ではまだ問題が残るものの、未上場企業にとってはこの制度の創設によってこれまで中々使いにくかった自社株式対価のM&Aが活用できるようになります。しかしここでポイントなのは、株価をしっかりと算定することです。上場企業の場合は市場で株価がついているため客観的な株価を使うことができますが、未上場企業は上場企業のような市場がありません。そのため買い手、売り手ともに未上場企業である場合は、それぞれでしっかりと説明可能な株式価値算定書を取得し、株価の客観性を担保する必要がこれまで以上に必要となります。

この記事の執筆者

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公認会計士 門澤 慎

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