
2026年上期が終了しました。現場では国際的最低課税ルール(ミニマムタックス)の導入・適用に伴う駆け込み案件への対応をはじめ、これまで以上に過密なスケジュールで案件が動いていた印象があります。DD(デューデリジェンス)をともに進める公認会計士や税理士の専門家の稼働率も非常に高く、体感としてもM&Aの件数は引き続き増加傾向にあると感じていました。それでは、実際に2026年上期のM&A件数はどうだったのでしょうか。

月次の推移を見ると、1月245件、2月289件、3月330件、4月346件、5月250件、6月244件となり、上期累計では1,704件に達しました。特に3月・4月にかけては月300件を超える非常に高い水準で推移しており、ミニマムタックス対応などを背景とした駆け込み需要が市場を強力に牽引したことが数字からも窺えます。
この結果は、コロナ禍前の水準を明確に超え、我が国においてもM&Aが単なる緊急避難的な手法ではなく、企業規模を問わず「成長戦略の一環」として定着し、さらに加速していることを示しています。
また、今回の拡大で特筆すべきは、その「広がりの深さ」です。従来の「事業承継」におけるM&Aの活用はもちろんのこと、上場企業の「非公開化(MBO等)」、大手企業の「選択と集中に伴う事業撤退・カーブアウト」、さらには「スタートアップM&A」に至るまで、全領域・全セグメントにおいてM&Aが活発化しているイメージを強く持ちます。あらゆる局面でM&Aが標準的な選択肢として組み込まれるようになったと言えるでしょう。
そして、このようにM&Aが多様化・複雑化し、「広がりの深さ」を増している今だからこそ、その難局に対応できる経験豊富で確かな実績を持ったM&Aアドバイザーの存在が不可欠になっています。制度や手法が高度化する中で、表面的なノウハウだけでは防げないリスクや、見落としがちな価値が数多く存在するからです。
改めて感じますのは、「M&Aは、いつ、誰とやるか」が成否を分ける最大のポイントであるということです。最適なタイミングを逃さず、真に信頼できるパートナーとともに進められるかどうかが、その後の企業の運命を大きく左右します。
M&Aが特別なイベントではなく、一般的に企業の経営戦略として根付いたこれからの時代においては、いざという時だけでなく、「日常的に気軽に経営やM&Aの相談ができるアドバイザー」をあらかじめ身近に準備しておくことこそが、最も有効な備えになるのではないでしょうか。
事業再編や成長投資が全方位で進む現状は日本経済にとって前向きな変化ですが、件数が急増し領域が多岐にわたるからこそ、これまで以上に質の高いディール遂行能力が求められます。市場の拡大や案件の増加に浮かれることなく、私たち専門家も地に足をつけた活動をし続けることが重要であると考えます。
過去コラム
2025年度通期M&A件数
2025年度上期M&A件数
2024年度通期M&A件数
2024年度上期のM&A件数
2023年度のM&A件数(通年比較)
2023年度のM&A件数(年度比較と同月比較)
2022年度のM&A件数(年度比較と同月比較)
この記事の執筆者
- 公認会計士 門澤 慎