
M&A支援機関登録制度 実績報告等についてが公表される
2023年1月のコラム「M&A支援機関登録制度からみる、中小M&Aアドバイザー業界の今」でもM&A支援機関登録制度について取り上げましたが、この3月に、中小企業庁が開催した第8回中小企業の経営資源集約化等に関する検討会で、「M&A支援機関登録制度 実績報告等について」が公表されたので、内容をみてみたいと思います。
M&A登録支援機関のうち、70%超は案件実績がない
まず報告内容の概要は以下の通りです。

調査対象は、2021年4月1日~2022年3月31日の間に最終契約に至った、資本金1億円以下の法人を対象等としたM&Aとなります。ここでまず特筆すべきは、M&A支援機関に登録した会社等が2,823社ある中で、上記期間でM&Aを最終契約までサポートできた会社が723社で、残りの1,917社(70%超)は最終契約に至った案件がゼロだったということでしょう。この1,917社という数字が多いのか少ないのかは議論が分かれるとことではありますが、前回コラムで記載したように、0~2名のM&A支援機関が1,998社、そして2020年代に設立したM&A支援機関が1,361社であること鑑みると、規模の小さい、この数年参入してきた業者は、なかなか案件の成約までは至っていないのではないか、と(短絡的かもしれませんが)推測できます。やはりいくらニーズがあるマーケットであったとしても、参入したからとて簡単に案件ができるわけではないのでしょう。
業種別では、医療・福祉の成約件数が一番多い
また本資料ではとして、業種別のM&Aに関する資料が開示されています。

これは非常に興味深い資料です。件数の多い順番に、「医療・福祉」、「卸売業・小売業」、「製造業」、「建設業」の順となっています。M&Aは同業以外の会社を買収するケースもありますが、やはり一般的には同業同士が多いです。そう考えると、これら業界は足元で業界再編が進んでいる業界とも見て取れます。特に「医療・福祉」はこの数年でこの分野のM&Aを専門に行う業者・部隊が増えているようにも感じております。特化してサポートする人員が増えたことで、よりM&Aの件数が積みあがっている者だと考えます。
おわりに
今回は上記の2つの資料を紹介しましたが、その他の調査結果(都道府県別の件数、手数料について等)も公表されています。関心のある方は読んでみると、色々と発見があるかもしれません。
参考情報
中小企業庁「M&A支援機関登録制度 実績報告等について」
この記事の執筆者
- この記事の執筆者
- 公認会計士 門澤 慎