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会社分割や事業譲渡等のカーブアウト型M&Aにおける論点とは?

2021.07.07コラム

会社分割や事業譲渡等のカーブアウト型M&Aにおける論点とは?タイトル

みなさん、カーブアウト型M&Aという言葉を聞いたことがあるでしょうか。もしかしたらどこかで目にした程度かもしれませんし、まったく聞いたことがないかもしれません。しかし会社分割や事業譲渡ということはM&Aに関心のある人は聞いたことがあると思います。

「事業」を切り出してM&Aすることがカーブアウト型M&A

カーブアウトは英語表記では「Carve out」であり、「切り出し」という意味になります。そしてM&Aにおけるカーブアウトは、「事業の」切り出しという意味で使われることになります。ここでM&Aにおいて事業を切り出す時はどのような方法があるでしょうか。おそらく通常は、会社分割や事業譲渡といったスキームを使うことになると思います。そのため、カーブアウト型M&Aとは、一般的には会社分割や事業譲渡によるM&Aということになります。

カーブアウト型M&A特有の論点は2つ

カーブアウト型M&Aと会社全体のM&Aとの比較

 事業を切り出す会社分割や事業譲渡のM&Aは、会社全てをM&Aにより買収する株式譲渡と比べ少し面倒な論点が発生します。資産・負債(有形・無形を含む)の切り分け問題とスタンドアローン問題という論点です。株式譲渡は会社の全ての事業を買収するため、全ての事業に関するリソースを引き継ぐことができます。このリソースには事業に携わる直接部門の人や資産(負債)、事業を間接的に支援する間接部門、その会社の持っているブランドや技術等、多岐に渡ります。株式譲渡ではこれら全てを引き継ぐことが前提となるので、事業の継続性という意味では、これまでの事業がしっかりとしている限り、買収したとたん事業が立ち行かなるといったことはそうそうないでしょう(クリティカルな問題が発生している場合等を除き)。
一方、会社分割や事業譲渡は、事業を切り出すのでもう少し問題が複雑になります。

資産・負債の切り分けに関する論点

 
まず資産・負債(有形・無形を含む)の切り分け問題です。例えば1つの会社でAとBという2つの事業を営んでおり、そこからBという事業を切り出すとしましょう。会社の管理上、Aという事業に紐づく資産負債はこれ、Bという事業に紐づく資産負債はこれ、といった管理がしっかりとなされている会社であれば、Bに紐づく資産負債はすぐに特定できるかもしれません。しかしそのような会社ばかりではありません。またAとBが共用で使っている資産(オフィスやソフトウエア等)もあれば、兼務している従業員もいるはずです。これらを合理的に切り分けて、会社分割や事業譲渡により買収した後、円滑に事業を運営するためには、Bという事業に紐づく資産負債や、共用資産をどの程度引き継ぐべきかについて、しっかりと把握しその範囲を決定する必要があります。

スタンドアローン問題に関する論点

またスタンドアローン問題も発生します。スタンドアローン問題とは、母体であった企業や企業グループから分離・独立をするに伴い発生する様々な問題をいい、例えばブランドの消失、バーゲニングパワー(取引先との交渉力)の喪失、安価な仕入れ先の喪失、ITシステムの分離コスト、その他共通部門機能の喪失等を言います。その企業または企業グループにいたからこそ享受できた諸々の無形のリソースがなくなった場合、事業にどの程度の影響を与えるのかについても、しっかりと検討しなければなりません。

カーブアウト型M&Aにおいても、ディーデリジェンスをしっかりと実施することが大事

このように事業譲渡や会社分割等のカーブアウト型のM&Aでは、株式譲渡と比較し特有の論点が発生します。そのためこれらの論点をしっかりと検討するためにも、財務・税務や法務等のデューデリジェンスをしっかりと実施する必要があります。

この記事の執筆者

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公認会計士 門澤 慎

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