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コロナ環境下におけるM&A件数の推移

2020.05.28コラム

コロナウイルスにより我が国を含む世界中の株式市場が不安定な状況にある中で、M&A市場にも影響が出ています。
下記は過去1年間の月次の日経平均株価(終値)とM&A件数(一部出資を含む)をグラフにしたものです。

日経平均株価(月末終値)とM&A件数(一部出資を含む)の推移を現したグラフ

出典:M&A件数は株式会社レコフより収集し、弊社にて作成

リーマンショック後は、事業承継問題の解決手段としてM&Aの活用が進みM&A件数も増加

一度はリーマンショックの影響で大きく落ち込んだM&Aの件数ですが、その後の株式市場の立ち直りに合わせて右肩上がりで伸びてきました。
特にここ数年は日本企業の海外企業買収や業界内の再編に係るM&Aだけではなく、社会問題化している事業承継問題の一つの解決策としてM&Aが活用されることにより中小企業のM&Aの件数が特に伸びてきたことで、この1年間のM&Aの件数(一部出資を含む)も月300件台で推移しておりました。

2020年4月度は景気の見通しが悪化しM&A件数も減少

しかしこの1年間、21,000円~23,000円で推移していた株価が、コロナウイルスの影響により2020年3月19日に16,358円という2016年11月9日以来3年4か月ぶりの安値に沈んだことで一気に将来の景気見通しがネガティブとなり、結果として2020年4月のM&Aの件数は251件と大きく落ち込みました。

M&Aは通常、スタートからクローズ(終了)までに数か月から1年程度かかります。
そしてその中でも交渉が本格化し始めるのがDD(デューデリジェンス:財務・税務・法務等の調査)~最終契約交渉のプロセスとなります。

日本では2020年2月頃から急速にコロナウイルスの経済に与える影響の予測がネガティブとなり、3月でそのネガティブな予測が顕在化しました。
そのため2020年2月頃にDDや最終契約交渉が開始された案件において、コロナウイルスの影響により対象となる企業の財務の状況や将来の事業計画等の不確実性が大きく増加し本来4月中にクローズする予定であった案件の交渉が中止もしくはペンディング(保留)になったことが、M&Aの件数を大きく減少させた最も大きな要因なのではないかと推測できます。

緊急事態宣言解除後のM&A市場の見通し

世界中で開発されているワクチン開発・製造の進捗状況や、海外における経済活動の段階的な再開等のニュース、そして日本においても2020年5月25日に緊急事態宣言の解除されたことで、株価も徐々に回復していく可能性は高いと思われます。

しかし一度大きく痛んでしまった企業の財務状態や売上の回復には時間がかかります。
そのため企業の将来の業績見通しを現時点ではポジティブに説明することが難しくなるため、コロナウイルス発生前のような高いバリュエーションでのM&Aは一定程度減少するかもしれません。

M&A市場におけるポジティブな予測

一方で今後は救済型のM&Aが増加する可能性もあります。
コロナウイルスの影響をあまり受けなかった業界、または財務基盤が盤石な体力のある企業は、事業自体はしっかりとしているもののコロナウイルスで短期的に財務状態が悪化した企業を買収することで自社の事業を成長させることができます。
そして売り手の企業にとっても雇用や顧客を守ることが可能となります。

M&Aの活用は重要な成長戦略の一つ

もうしばらくはM&Aの件数についても低調になることが想定されるものの、今後は救済型のM&Aが増加することや、中止またはペンディングとなったM&Aの一部が再開されることにより、一定程度の件数は戻ってくるものと思われます。
今日、企業の成長にとってM&Aは欠かすことのできない重要な成長戦略の一つです。このような経済環境下においても、M&Aという戦術を上手に活用することが企業価値を向上させる上で重要となります。

この記事の執筆者

この記事の執筆者
公認会計士 門澤 慎

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