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買収会社の買収後の関与について考えてみる

2022.08.01コラム

買収会社の買収後の関与について考えてみる

PMIは「誰がどうやって実行すればいいのか」

 前回に引き続き、PMI関連のコラムとなります。前回のコラム( 中小M&AにおけるPMIを考えてみる)ではPMIの重要性やM&Aプロセス時から専門家任せにせず自社内のリソースもしっかりと割くことの重要性、そして中小PMIの存在について記載しました。またPMI実施においても全プロセスで専門家を起用して統合作業を実施することは難しいため、優先順位をつけて自社内のリソースも活用し、効果的かつ効率的に進める必要性がある旨を記載しました。これら内容は、「言うは易く行うは難し」ことで、簡単なことではありません。また効率的を意識しすぎて関与度が薄れてしまい、予定通り進まない会社も多いはずです。ここで今回はPMIの実行部分、特に「誰がどうやってPMIを実行するか」について考えてみたいと思います。

「誰を」プロジェクトリーダーとするか

 PMI実行における諸論点は色々とあります。「ビジョンの統合」、「マネジメントの統合」、「人事、経理、総務等の管理の統合」、「IT等システムの統合」、「事業シナジーの創出」等、各項目に細分化された論点を抽出し、優先順位を付けた上で100日プラン等のスケジュールに落とし込んで、プロジェクトチームを作り実施することが(教科書的には)一般的です。ここでまず論点となるのが、PMI全体のプロジェクトチームのリーダーを誰にするか、だと思われます。異なる組織を統合するには大きなエネルギーが必要です。買収した会社の規模が大きかったらなおさらです。そのため強いリーダーシップと幅広い知見をもった人材が望まれるでしょう。そして親会社の社長等の経営陣ともしっかりとコミュニケーションをとれる人材である必要があるでしょう。親会社の経営陣の一方的な要求ばかりを買収企業先に押し付けてうまくいくはずがなく、この点をしっかりと調整する力が必要だからです。そのため親会社の経営陣や、親会社の社長の右腕左腕レベルの人材を選任することが良いかもしれません。

「どうやって」実行するか

 次に「どうやって」を考えたいと思います。パターンとしては以下の3つが挙げられるかと思います。

  1. 親会社のPMIプロジェクトリーダー(及びそのメンバー)と買収先会社とで定期的にMTGを持ち、論点の進捗を管理する。論点ごとに親会社がサポートするが、親会社はあくまでもサポートに徹し、実行は買収先の会社が行う
  2. 上記1に専門家を起用し、実行する
  3. 親会社のPMIプロジェクトリーダー(もしくは加えてそのメンバー)が一定期間、買収先企業に常駐し、買収先会社と一緒に日々、PMI活動を実行する。その上で専門家の起用も検討する

信頼関係を作ることが重要

 答えがあるものではありませんが、理想は上記3だと考えます。特に重要なM&AやまだM&Aに慣れていない会社であれば上記3が望ましいでしょう。PMIはビジョンの統合等の大きな話から、管理機能の統合等、日々の業務面の統合まで多岐に渡ります。これらを統合するには一定期間でも買収先会社に常駐し、業務面からそこにいる人間まで、しっかりと観察することで机上では見えなかった部分が見えてくるはずです。そしてその部分が(ひょっとしたら)統合作業のボトルネックになり得る要素かもしれません。また買収先の会社にもこれまでやってきたやり方がある中で、M&Aにより親会社が登場したことでそのやり方を変えることになります。そのような状況の中、(少し精神論的にはなりますが)一定期間でも一緒の組織で働くことで信頼関係が生まれることで、統合作業に協力的になってくれるはずです。どれだけテクニカルなスキルで会社を分析し論点を挙げたところで、最後は人が最も大事です。人が動かないと組織は動きません。PMIプロジェクトを実行する上で買収先の会社にしっかりと動いてもらうためにも上記3が良いのではと考えます。

この記事の執筆者

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公認会計士 門澤 慎

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