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M&Aプロセス終了のタイミング

2020.11.10コラム

M&Aプロセス終了のタイミング タイトル

株式譲渡契約書に調印したらM&A終了?

M&Aは数か月~1年を超える期間が必要となり、またその期間において色々な問題やトラブル、タフな交渉等が発生するので、中身も非常に濃いものとなります。これら大変な道のりを乗り越えてやっと株式譲渡契約書に調印することができたときの関係各社の安堵感はとても大きいものになるでしょう。特に会社を売却する売り主にとってM&Aは、人生で一度経験するかしないかの大イベントであるため、ほっとすることと思います。
しかし、実は株式譲渡契約書に調印をしただけではM&Aのプロセスは終了しておりません。M&Aの終了は、株式を渡してその対価である譲渡金額の入金を確認した時となります。それでは「株式譲渡契約書に調印をした時」と「株式を渡してその対価である譲渡金額の入金を確認した時」の間には、何があるのでしょうか。

株式譲渡契約書締結後に「クロージング期間」が存在する

株式譲渡契約書の中にはクロージング条項と呼ばれるものが存在します。このクロージング条項とはM&Aの目的である売買行為を完了(「株式を渡してその対価である譲渡金額の入金を確認」)するために必要となる具体的な義務等に係る条項です。内容にもよりますが、株式譲渡契約書調印後、売買が完了(株式を渡してその対価である譲渡金額の入金を確認した時」)するまでをクロージング期間として1か月程度の期間を設けることが一般的(内容によってはそれ以上)となります。

クロージング期間では、売却企業の契約引継ぎなどチェンジ・オブ・コントロール条項への対応を実施

ここで一般的にクロージング条項に規定される内容として重要なものに、取引先や債権者に対してM&Aによって株主が変わることについて理解を求めるための記載があります。M&Aの交渉中は途中でブレイクになるリスクがあるため、特に取引先に対してM&Aにより株主が交代する可能性について事前に説明することが困難です(噂が広がったり、邪魔をされたりするリスクが出る)。しかし一方でこれら取引先と売却企業との間では、契約の一方当事者に支配権の変更が生じた場合、他方の契約者は契約を解除することができると規定した条項である、チェンジ・オブ・コントロール条項と呼ばれるものが取引基本契約や賃貸借契約等で締結されてるケースが散見されます。この契約があることで、買い手はM&A完了後、重要な取引先との取引が継続されず、当初計画していた事業計画を達成できないないリスクが生じてしまいます。そのため買い手としては、少なくとも交渉によりM&Aのブレイクのリスクが原則なくなった時、すなわち「株式譲渡契約書に調印をした時」から、取引先に対して株主が新たに買い手に変更となる旨を説明するとともに、その後も取引を継続できるように合意を取る必要が出てくるのです。

クロージング期間ではDDで検出された論点を解決することも。くれぐれも入金確認まで気を抜かずに!

クロージング条項は上記以外にも、財務・法務DDで検出された事項を治癒する内容が記載されることが多々あります。そのため「株式譲渡契約書に調印をした時」は当然、ほっと一息つきますが、まだまだ気を抜かず、「株式を渡してその対価である譲渡金額の入金を確認した時」までもうひと踏ん張りする必要があるのです。

この記事の執筆者

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公認会計士 門澤 慎

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