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会社の価値の考え方②(DCF法と類似会社比較法の関係)

2020.09.29コラム

会社の価値の考え方➁のタイトル

株式価値算定では一般的にDCF法と類似会社比較法の2つの方法で算定する

会社の価値の算定方法として、よくDCF法と類似会社比較法が使われます。そして(特に上場会社では)それぞれの手法によって株式価値を算出し、会社の株式価値の水準を確認します。みなさんもTOBのプレスリリースで、算定に関する事項において(DCF法と類似会社比較法が使われた場合は)DCF法:●●円~●●円、類似会社比較法:●●円~●●円、との記載を見たことがあるかと思います。そして(大抵の場合は)それぞれの手法によって算定された結果には大きな乖離がなかったと思われます。それではなぜそれぞれ異なる算定手法にも関わらず算定結果が近似するのでしょうか。

DCF法も類似会社比較法も、将来キャッシュフローに基づいた考え方

DCF法と類似会社比較法について

DCF法は対象会社の事業計画を用いて会社の将来キャッシュフローを直接割り引いて株式価値を算出する方法です。一方、類似会社比較法は対象企業が属している業界の類似上場企業の倍率を基準として、対象企業の株式価値を算出しようとする方法です。(詳しくは、2020年1月31日の「会社に価値の考え方」をお読みください。)

類似会社比較法は将来キャッシュフローの予測を間接的に導く考え方

ここで類似会社比較法をもう少し丁寧に説明すると、類似会社比較法は対象企業が属している業界の類似上場企業の将来キャッシュフローに関する情報が投資家の予測に織り込まれ、その情報を前提として形成された株価と財務数値の倍率を使う、という考え方となります。つまりDCF法において明示的に使用される将来キャッシュフローの予測から割引計算により導き出される株式価値の算定仮定を、類似上場会社の倍率を使って間接的に導くということになります。

DCF法と類似会社比較法の結果は理論的に一致する

そのためDCF法と類似会社比較法は、将来キャッシュフローから導き出される株式価値を直接的に算出するか、間接的に算出するか、の違いであるため、理論的には一致すると言われます。

2つの手法で算定しても理論的には一致するが、算出に使用される事業計画や類似会社の選定等にズレがあれば乖離することも

しかし実際に株式価値算定をした方であれば経験があると思いますが、必ずしも各手法で算定した結果が一致するケースばかりではありません。それは以下の要因によるものだと考えられます。

① DCF法で使用された事業計画が業界水準の成長率を大きく上回る(下回る)計画となっている
② 類似会社比較法で選定された類似会社が妥当ではない

上記①について対象とする企業の事業が実際に業界水準を大きく上回る(下回る)中期の成長(5年程度)が見込めるのであればその事業計画を使用することも検討すべきでしょうが、ある程度信頼度の高い具体的な事象等が発生していなければ、その蓋然性を説明することは容易ではありません。また②については業界の選定が間違っていたり、仮に業界の選定が問題なかったとしても選定する企業の数が少なければ少ないほど、算定時における類似企業特有の事象を反映してしまうため客観性のある数値がとれません。これら要因により各算定手法における算定結果が乖離すると言われています。
 

まとめ

算定結果に大きな乖離が出た場合は、上記前提から検証する必要があり

この考え方は株式価値算定の検証にも用いることができます。DCF法と類似会社比較法でそれぞれ算定した結果、大きな乖離が出た場合は、まずは上記の要因を思い浮かべながら算定で使用した前提を再検証することで前提を見直すきっかけとなります。また大きな乖離がない場合は算定で使用した前提に大きなズレがないと考えることができます。
このような考え方から、株式価値算定をする際は、まずはDCF法と類似会社比較法のそれぞれで算定を実施することが基本となります。

この記事の執筆者

この記事の執筆者
公認会計士 門澤 慎

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