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株式集約の方法とは

2020.08.28コラム

株式集約の方法

円滑な株式譲渡プロセスのためには可能な限り事前の株式集約が必要

M&Aで株式を売却する際、買い手は100%取得を希望することが多いと思います。そのためこの場合、100%売却を前提として交渉をすることになります。ここで例えば社長が株式を60%、残りの40%を親族等複数人が分散してもっている状態で、社長と残りの株主たる親族の関係が上手くいっていない場合どうなるでしょうか。交渉を進めている社長の持ち株60%は売却できたとしても、残りの株式40%分は親族の一部の人間が条件に納得がいかなかったり、そもそも株式を売る気がないなどの理由で売却に合意しないかもしれません。そうなると買い手は100%取得が困難となり60%分のみを取得してもしょうがないので、交渉が中断してしまいます。そのため売り手は円滑に売却プロセスを進めるためM&Aのプロセスを開始する前に、可能な限り株式を集約する必要があります。

最もシンプルな株式集約方法は、個別の株式買い取りだが、色々な課題が存在

株式を集約する一番シンプルな方法は、株主から株式を買い取ることです。株主ごとに株式売却の打診をし、100%になるまで相対で買い集めることができれば問題はありません。しかしこれはなかなか簡単ではありません。条件で折り合わなかったり、株式を売却する意思がなかったり、そもそも株主がどこにいるのかわからないといった場合があるからです。それではこのような場合、個別に株式を買い取る方法以外で株式を集約する方法があるのでしょうか。

会社法の株式集約に関する代表的な規定は4つある

会社法では例えば以下の規定があります。

①特別支配株主の株式売渡請求(会社法第179条)
1人の株主が90%以上の株式を持っている場合、その株主は他の株主に対して自分に株式を売り渡すことを強制することができます。2014年の会社法改正で導入された比較的新しい制度ですが、近年活用される例が増加しています。


②所在不明株主の株式売却制度(会社法第197条)
定時株主総会の通知等を株主名簿上の住所に送ったが5年間以上到達しなかった株主については、裁判所の手続きを経た上で株式を取得できます。


③株式併合+端数の株式の買い取り(会社法第180条、235条)
例えば100株を1株にするという株式併合を実行した場合、1株しか持っていない株式は1/100株となり、1株未満の株主となります。このような端数の株式は会社が強制的に金銭で買い取ることができます。ただし株式併合は株主総会の特別決議が必要となります。2014年の会社法改正で上記①が導入されてからは採用されることが少なくなっています。


④種類株式(全部取得条項付きの種類株式)+端数の株式の買い取り(会社法第171条、111条)
既存の普通株式を全部取得条項付きの種類株式にします。そして会社が全部取得条項付きの種類株式を買い取り、その対価を現金ではなく普通株式とします。その際、対価として交付する株式を例えば全部取得条項付き種類株式100株につき1株とした場合、100株未満の全部取得条項付き種類株主は、1株未満の端数の株主となり、会社は強制的に金銭で買い取ることができます。ただし全部取得条項付き種類株式は定款の変更が必要となるため、株主総会の特別決議が必要となります。2014年の会社法改正で上記①が導入されてからは採用されることが少なくなっています。

会社法の規定を活用し、より効果的な株式譲渡を実現

上記で挙げた方法がすべてではありませんが、このような会社法の規定を上手く活用することで、より円滑に株式を集約することが可能となります。全てのケースに当てはまるものではありませんが、是非一度、ご検討ください

この記事の執筆者

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公認会計士 門澤 慎

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