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経営資源引継ぎ補助金とは (中小企業庁 令和2年7月6日公表)

2020.07.27コラム

中小企業庁が令和2年7月6日に「経営資源引継ぎ補助金」制度を公表しました。(*1)

これは、新型コロナウイルスの影響下にあっても、中小企業の貴重な経営資源や、雇用・技術を次世代へ引き継ぎ、地域のサプライチェーンを維持するため、中小企業の第三者承継時の負担である、M&A専門業者・士業専門家等の活用に係る費用(仲介手数料・ディーデリジェンス費用、企業概要書作成費用等)を補助するものとなります。
中小企業の外部の専門業者に対する費用負担を削減することにより親族外事業承継を一層促進させようとする、令和2年3月公表の中小M&Aガイドライン(*2)公表に続く中小企業庁の大きな取り組みとなります。

関連記事:ガイドラインに関する解説記事はこちら

「中小M&Aガイドライン」を読んで(中小企業庁 令和2年3月公表)

補助金は買い手側又は売り手側、及び申請時点の状況により4つのタイプに分類される

この補助金は大きく分けて以下のタイプに区分できます。

タイプ 補助率 補助上限額
買い手支援型
(Ⅰ型)
補助対象経費の2/3以内 ①経営資源の引継ぎを促すための支援
100万円
②経営資源の引継ぎを実現させるための支援
200万円
売り手支援型
(Ⅱ型)
①経営資源の引継ぎを促すための支援
100万円
②経営資源の引継ぎを実現させるための支援
650万円(廃業を伴わない場合は200万円)

つまり買い手も売り手も、それぞれ発生した費用が補助対象となります。

それでは上記の①と②の違いは何でしょうか。

中小企業庁の公募要領(*3)では、以下のように規定されています。
①については「補助事業期間に被承継者と承継者の間で事業再編・事業統合等が着手される予定であること」、
②については「補助事業期間に被承継者と承継者との間で事業再編・事業統合等が着手され、かつ行われる予定であること」

端的に
①は相手や時期がまだ決まってない場合
②は相手や時期が決まっている場合(②でも申請時点では相手や時期が決まっていなくてもよい)
と整理
したほうが分かりやすいかもしれません。

ここで注意ですが、①と②の両方をもらうことはできません。
1案件の上限金額は②となります
(つまり①で100万円もらって、追加で②で200万円もらうことはできない)。

補助の対象となる費用はかなり幅広く規定

次に補助の対象となる費用は具体的にどのようなものでしょうか。

これは結構、幅広に規定されています。
Ⅰ型・Ⅱ型共通の経費として、謝金、旅費、外注費、委託費、システム利用料、
Ⅱ型の経費として廃業費用(廃業登記費、在庫処分費、解体費、原状回復費)があります。

さらに詳細な費目については公募要領を見て頂ければと思いますが、列挙すると以下の通りです

  • アドバイザリー契約の着手金
  • 候補先選定のマーケティング費用
  • アドバイザリー契約のリテーナー費用
  • 基本合意報酬
  • 成功報酬
  • 株式価値算定費用
  • デューデリジェンス費用
  • 各種調査費用
  • 契約書作成費用
  • その他弁護士費用
  • 不動産鑑定書取得費用
  • 定款変更等の登記費用
  • 根抵当権等の登記変更費用
  • 許認可等申請費用
  • 社会保険労務士への費用
  • その他M&Aに関するアドバイス費用

このようにかなり幅広に規定されている印象です。
ただし再生計画書の作成等のコンサルティング費用等や株式譲渡前の株主整理に関する資本政策コンサルティング費用も対象には含まれないようです。

ここで注意としては補助金対象経費については原則、2者以上の見積り(相見積)が必要となります。
アドバイザリー契約の相見積もりの困難性(ただし特段の事業があれば例外はあり)や、専門家報酬は安ければいいというものではないという批判も出そう(安かろう悪かろうでは困る)ですが、この点は補助金という性質上、仕方ないのかもしれません。                            

補助金のスケジュール

本補助金のスケジュールですが、これは整理すると以下のようになります。

経営資源引継ぎ補助金のスケジュール

原則、7月13日から8月22日までに、上記①、②別に想定される経費を見積もって申請し、その後、9月中旬までに国の審査を受け交付決定を受けます。
交付決定を受けてから最長で1月15日までに支出のあった経費が補助金対象となります(つまり交付決定日以前に支払った経費は原則対象外)。
ここでⅡ型(売り手)については事前着手届出書を提出すれば補助事業期間が4月7日以降の着手日から最長で1月15日までとすることができます。
そのため、売り手については遡及して支払った経費を補助金対象にすることが可能となります。
なお補助対象者ですが、中小企業庁の経営資源引継ぎ補助金の概要にもあるように、「中小企業」のための補助金なので、大企業は補助対象者にはならず、中小企業と個人事業主となります。

「経営資源引継ぎ補助金」に関する所感

今回の経営資源引継ぎ補助金制度は、親族外事業承継をより一層促進させるという中小企業庁の意気込みを感じるものであります。
一方で補助金という性質と、実務に乖離があり、使うことが困難なものも一部散見されます。
例えば②「補助事業期間に被承継者と承継者との間で事業再編・事業統合等が着手され、かつ行われる予定であること」の場合、相手と時期が決まっていなければなりませんが、売り手の場合、そのような状況で初めてアドバイザリー契約を締結することは中々ないと思われます(すわなち交付決定期間時に②を申請するのが困難)。
そう考えると売り手は①「補助事業期間に被承継者と承継者の間で事業再編・事業統合等が着手される予定であること」、すなわち相手と時期が決まっていない場合の100万円をしっかりと申請することが現実的かもしれません。
しかしそれでも、専門家に支払う費用の一部でも補助対象となることは、中小企業が親族外事業承継の検討をさらに前に進める上で大きな武器になることと思われます。
本補助金の利用が促進され、かつ来年再来年も本補助金制度がより進化しながら継続すれば、親族外事業承継問題の解決の一助になるのではないかと考えます。

(*1)中小企業庁 令和2年度第一次補正予算経営資源引継ぎ補助金の公募要領を公表します(7月13日申請受付開始予定)
(*2)中小企業庁 中小M&Aガイドライン -第三者への円滑な事業引継ぎに向けて-
(*3)中小企業庁 経営資源引継ぎ補助金事務局 令和2年度補正 経営資源引継ぎ補助金 公募要項
中小企業庁 令和2年度補正経営資源引継ぎ補助金Webサイト

この記事の執筆者

この記事の執筆者
公認会計士 門澤 慎

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