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昨今の中小企業の後継者不在率の推移から見るM&A支援機関の重要性

2023.06.12コラム

昨今の中小企業の後継者不在率の推移から見るM&A支援機関の重要性

多くの中小企業の経営者が廃業を考えている

事業承継問題が社会問題となり、様々な事業承継に関する調査を行われています。例えば日本政策金融公庫が2020年に出した「中小企業の事業承継に関するインターネット調査」によると、中小企業のうち後継者が決定されている企業は12.5%にすぎず、52.6%の企業が廃業を予定しているという結果が出ています。また中小企業庁が2016年に公表した、中小企業の事業承継の現状と課題の中では、20年間で経営者年齢の山が47歳から66歳へ移行し2020年頃には数十万人の団塊経営者が引退時期に差し掛かること、直近10年間で法人経営者の親族内承継の割合が急減し、従業員や社外の第三者といった親族外承継が6割超に達していることを示していること、60歳以上の経営者のうち、50%超が廃業を予定しており、特に個人事業者においては、約7割が「自分の代でやめようと思っていた」が38.2%と最も多く、「事業に将来性がない」が27.9%、「子供に継ぐ意思がない」、「子供がいない」、「適当な後継者が見つからない」との後継者難を理由とする廃業が合計で28.6%を占めている等の分析をしています。いずれの調査結果をみても、中小企業の承継問題が大きな問題に直面していることが見てとれます。

一方で、後継者不在率は高水準であるものの改善している

このような様々な調査結果の中で、帝国データバンクが2022年に出した「後継者不在率」動向調査によると、後継者不在率は2022年では52.7%となり、5年連続で不在率が低下しているとの分析結果で出ていました。52.7%という数字自体は依然として後継者不在率としては高水準ではあるものの、後継者難によって事業承継問題が深刻化しているという昨今の風潮を考えると、後継者不在率が低下しているという結果は非常に興味深い結果です。この背景には、後継者候補で「非同族」が最も大きな選択肢となり、事業承継の脱ファミリー化が進んだことが、後継者不在率を低下させている大きな要因であると推察されます。そして脱ファミリー化が進んだ要因としては、事業承継型M&Aが徐々に一般的な選択肢になってきたことが挙げられるでしょう。

事業承継問題解決に向けて中小M&A支援機関の果たす役割は大きい

 このように事業承継型M&Aが進んだことの一因には、M&A支援機関が増えてきたことがあります。M&A支援機関の存在が事業承継問題の解決の一助となっていることは間違いないと思われますが、一方で以前のコラムでも記載しましたが、ここ数年で規模の小さなM&A支援機関が急増し、かつ1年以内での支援実績に乏しい支援機関が多数いるのも事実です。我が国の経済の土台を支える中小企業の技術・ノウハウをしっかりと次世代につなげていくためには、しっかりとしたM&A支援機関が増えることが肝要です。この業界は、(能力的な)資格要件もなければ(法的拘束力のない)倫理規則もないため、まだまだ脆弱で危なっかしい業界です。我が国の経済の土台を強くする意味でも、M&A支援機関の業界をもっと成熟させる必要があるでしょう。

この記事の執筆者

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公認会計士 門澤 慎

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