COLUMN

コラム

中小M&Aガイドライン改訂版(第2版)における「重要事項説明」をやってみて

2024.03.07コラム

中小M&Aガイドライン改訂版(第2版)における「重要事項説明」をやってみて

 2023年9月22日に中小企業庁より公表された「中小M&Aガイドライン(第2版)(*1)」で改訂された内容の中に、以下、重要事項説明があります。

仲介契約・FA契約締結前の書面交付しての重要事項の説明
・書面に記載して説明すべき重要事項の項目の見直し
・説明の相手方・説明者・説明後の十分な検討時間の確保 等

参考:中小M&Aガイドラインの改訂(第2版)を考えてみる

 本格的な運用は令和6年4月からとなりますが、先日、先行して重要事項説明書を作成し、FA契約の説明を売主にしてきました。

 やってみて思ったことですが、話している内容自体はこれまでFA契約書のみを用いて売主に説明してきた内容と特段の変わりはありませんでした。一方で、FA契約書のみを使って説明するよりも、重要事項説明書という、FA契約書の内容を重要な点に集約された書面を使って説明することで、説明がしやすかったと感じました。またFA契約と仲介契約の違いをしっかりと対比させながら説明できた点も、使いやすかったと思いました。

 FA契約、仲介契約に関するトラブルは、時々耳にします。M&A専門業者がしっかり説明しなかったことによるトラブルや、契約内容が曖昧であるために解釈によるお互いの認識の相違によるトラブルも発生すると聞きます。この点、重要事項説明書を使って説明をすることで、これら問題は(少しは)減少することでしょう。

 ただし問題点もあります。これまでFA契約書・仲介契約書を適当に説明してきた業者は、重要事項説明書を使うことにより(説明者によっては従来よりも)丁寧に説明をする必要が出てきます。丁寧に説明をするということは、説明者は契約書の内容について、法的な観点と実務者の観点の両面の専門的知識を用いて説明する必要が出てきます。しかし、同様に重要事項説明を使って契約書の内容を説明する不動産業界には宅建という国家資格がありますが、M&Aアドバイザー業界には資格がありません。そのため、この能力面の担保をどこまでできるか、という点は課題となります。

 M&Aアドバイザー業界は、少しずつですがルールが整備されてきました。一方でルールが整備されればされるほど、能力面と倫理面の客観的な担保をする必要に迫られてきます。これは大きな課題です。個人的には、当面は公認会計士、税理士、弁護士、司法書士、行政書士、中小企業診断士等の従来の国家資格で代替しながら(例えば●人以上の組織には●人の資格者が必要といった要件とか)、どこかのタイミングでは新たな国家資格の創設の検討も必要なのではないか、と考えます。

参考情報

(*1) 中小M&Aガイドライン(第2版)

この記事の執筆者

この記事の執筆者
公認会計士 門澤 慎

M&A・事業継承に関するご相談を無料で承ります。
まずはお気軽にお問い合せください。

プルータス・マネジメントアドバイザリー所在地:東京都千代田区霞が関3-2-5 
霞が関ビルディング30階 
大阪オフィス:大阪府大阪市中央区本町4-2-12 
電話番号:03-3502-1223 
© PLUTUS Management Advisory Co., Ltd.