これまでのコラムでもコロナ環境下におけるM&A件数についてコメントしてきましたが、今回は2019年、2020年、2021年のM&A件数における同月比較をしたいと思います。なおM&A件数は「買収」と「事業譲渡」の合計件数をカウントしています。
出典:株式会社レコフより収集し、弊社にて作成
まずコロナ禍の影響を受けていない2019年の月別M&A件数を見てみると、上場会社の多くが決算月と置いている3月がピークとなり、その後はなだらかな推移をしていることが確認できます。この推移が例年の一般的な推移だと思われます。これに対して2020年は3月までは2019年と同様の推移をしていたものの、2020年4月の第一回緊急事態宣言により大きく件数が下落しています。まだコロナがどのようなものなのか世界中が理解できていない中で、多くの企業がリスク回避的な行動をとったことが要因に挙げられるでしょう。その後、第一回緊急事態宣言後は緩やかに回復していき、8月以降はコロナの影響を受けていない2019年と同水準まで回復していることも併せて確認することができます。
2021年は、2021年1月当初に第二回緊急事態宣言が発令されたことにより1月の出だしは低調であったものの、その後は2020年にコロナにより先送りになった案件が動き出したことで案件数が急回復し3月は2019年を上回る件数となりました。しかし再び足元でコロナの新規感染者が急増し2021年4月に第三回緊急事態宣言が発令されたことで、再びM&A件数が減少しています。しかしその後は回復基調に入り、2021年8月は2019年の件数と同水準まで回復しています。
これら3か年をみると、緊急事態宣言が発令された月は大きく件数が減少するものの、その後は例年以上のペースで回復し案件数が戻っていると言えるでしょう。コロナにより一時的にM&Aの件数が減少したとしても、企業側のM&Aニーズは底堅く、M&A件数は今後も堅調に推移していくと推測されます。
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- 公認会計士 門澤 慎